小児神経精神発達科

診療科の特色

私たちの科は、お子さんの身体的、精神的な発達に関して困難があると思われる、あるいは親御さんや周囲の人たちがそのような心配を抱いたときに、その原因や成り立ち(病態)を特定もしくは推測し、適切な治療や手立てを講じることによって、その子の力を最大限引き出す役割を請け負っています。

子どもが発達していく過程では、体をうまく動かせない、言葉をうまく話せない、落ち着きがない、かんしゃくがひどい、集団生活に溶け込めないといった様々な心配ごとが生じます。それらの問題に対して適切な対応をとらないままでいると、二次的な問題が生じて複雑化・深刻化することがあります。

一方、子どもはうまくいかなくなった部分を修復していく、もしくは軌道修正していく力(可塑性)を有しています。可塑性は低年齢ほど大きいのですが、小児期ではどの時点でも期待できるものです。従って、発達を阻害する要因を早期に突き止め、可能な限り取り除き、可塑性を引き出していくことがとても重要と考えられます。私たちの科では、お子さんの抱える困難さを専門的立場から捉えなおし(診断や見立てを行い)、親御さんや周りの人たちの漠然とした不安を軽減し、その子にとってふさわしい治療や手立てを推し進め、もしくは外部の機関(かかりつけ医や地域の医療機関、全国的な中核病院、行政・福祉・教育機関など)と連携して解決にあたっています。

適切かつ円滑な対応をはかるうえでは、多方面からの情報がとても役に立ちます。従って、私たちの科におかかりの際は、すでにかかっている医療機関や通っている保育園、学校などからの情報もいただけますと幸いです。

私たちの科が取り扱う問題は多岐に渡り、診断や見立て、治療や手立て、他機関との連携いずれも多角的・経時的に進めていかなくてはなりません。そのため、初診の予約が数か月先になってしまったり、診察の待ち時間が長くなってしまったりするご不便が生じております。発達の面で気がかりなことがありましたら、かかりつけ医や地域の医療機関の先生方に、すぐにでも取り組める手立てや専門医受診の必要性・緊急性についてもご相談いただけますと幸いです。

急激に進行する、もしくは突然生じた神経学的問題(けいれんや脱力、不自然な言動、発達の停滞・退行)については早急な診断・治療を要することが多く、総合診療科と連携して迅速な対応に努めております。まずは、かかりつけ医や地域の医療機関を速やかに受診し、ご相談いただけますようお願いいたします(夜間・休日で受診先が見つからない場合は、当院に直接ご相談ください)。

主な対象疾患

神経発達症群(知的発達症、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症、発達性協調運動症、チック症など)
言葉の遅れ、行動や情緒の問題、学習面の問題、集団不適応といった困難さが認められます。お子さんの中には、通常とは異なる感覚情報の捉え方や思考プロセスを有する場合があり、それが周りの人たちにとっては問題行動として映るため、「本人が頑張ろうとしないため」「わがままに育てられたため」などといった精神論で片付けられ、困難を大きくしてしまうことがあります。私たちは、そのような誤解を防ぎ、困難を減らし、その子なりの発達を支えていくことを主眼に携わっています。
てんかん
てんかん発作を主徴としますが、発症年齢、原因や併存症などによって治療のしかたや改善の見込み、発達への影響は多様で、一人ひとりの患者さんにふさわしい対応が求められます。てんかん発作は、明らかなけいれんを伴わないもの(突然ボーっとする、力が入らなくなるなど)や心の病気と間違われやすいもの(突然不穏になる、暴れたようになるなど)もありますが、前後の様子とは無関係に生じる発作的な現象で、同じ様式で繰り返されるのが特徴です。抗てんかん薬の開発や外科治療の進歩によって、子どもの健全な生活を保ちながら、てんかん発作を抑制することも可能になっています。そのため、早期の適切な診断と治療が重要と考えています。
周産期脳障害
新生児期に集学的治療を受け、救命できたものの明らかな脳障害を残してしまうような場合だけでなく、少し早く生まれたが新生児期は順調に経過した場合にも発達の問題をきたしうる、もしくは周産期すでに脳障害が生じていたものの乳児期早期には明らかな症状なく、その存在に遅れて気づかれることがあります。このような場合、頭部MRIで脳病変の局在を特定したり、詳しい発達検査で困難となっている部分を特定したりすることによって、適切な発達支援を講じていくことが可能となります。
神経・筋疾患
私たちの科では、中枢神経系(脳、脊髄)の病気だけでなく末梢神経や筋肉の病気も担当しています。脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィー(Duchenne型、福山型など)、ミオパチー、重症筋無力症などがこの範疇に該当します。呼吸や栄養にかかわる対症的治療の向上に加え、主な病態に作用する核酸医薬や遺伝子治療薬が開発され、早期の診断・治療によって大きな改善が期待できるようになっています。茨城県内において、私たちの科は筑波大学と協働して、このような先進的な医療を遂行しています。
神経皮膚症候群(結節性硬化症、神経線維腫症、スタージ・ウェーバー症候群)
結節性硬化症については、乳児期早期からの治療によるてんかんや発達予後の改善をはかっています。
先天代謝異常症、神経変性疾患(ミトコンドリア病、DRPLA、副腎白質ジストロフィーなど)
患者さんの数は少ないのですが、疾患ごとに専門的な対応が求められるため、積極的にご紹介いただいています。
先天性心疾患や血液腫瘍疾患に伴う神経学的問題
これらの疾患では、疾患に伴う全身状態の不安定さ、先進的な医療や長期入院の影響などで脳に障害をきたすことがあり、各疾患の主治医と協働して診療にあたっています。
不登校などの社会的な問題
からだとこころの両面から、心理士やソーシャルワーカーと協働して取り組んでいます。

なお、当科は小児科が母体であるため、思春期以後の摂食障害、気分障害、不安障害、解離性障害などについては、予約相談の時点で精神科への受診をお勧めする可能性があることをご了承ください。