病院長あいさつ

新井 順一

このたび、須磨﨑前病院長より院長を引き継ぐことになりました新井順一です。私は1985年の当院開院時より、新生児科医として勤務しており、今年で37年目を迎えます。開設時の年報で初代澤田院長のあいさつ文を読み返してみると、「昭和40年のころから茨城県にもこどもの専門病院がほしいという声があがっており、公的な答申が出されてからでも、7年の歳月を経て開設されたいわば難産の子であります」と書かれています。当時の県庁のみなさんはじめ、小児科医会、産婦人科医会などのご協力のもと、70床と全国一小さな小児病院でしたが誕生することができたのです。その後みなさまのご支援のもと現在は115床まで増加しております。ここまで歩んできた当院の院長を引き継ぐことに身の引き締まる思いです。

近年、ますます小児病院においては多職種連携が重要になってきています。私は新生児科医ですが、新生児科医のみでは助けることが難しい赤ちゃんが増えており、小児外科、心臓血管外科、脳外科や小児専門診療科などの連携がないと救命が難しくなってきています。当院でも、小児医療に関連する診療科やリハビリテーション科などを増やして、複雑な病気の小児も治療できるようにしてきました。小児専門病院では多職種連携がますます重要になってきていますが、当院はいまだに不十分な状態であり、今後の課題と考えております。

当院の使命のひとつは、小児科医を育てることです。茨城県の人口あたりの小児科医数は、もうずっと最下位です。新型コロナワクチンを接種したくても、小児科医がおらず接種が難しい市町村もあるのが現状です。安心して出産、子育てができるためには十分な小児科医の配置が重要です。県央、県北地域の小児科医の充実は須磨﨑前院長が取り組まれ、当院の小児科医数も増え、地域への小児科医派遣も行われるようになりましたが、まだまだ少ないのが現状であり、当院の重要な責務と考えています。小児科専門医を育てるには、質の高い高度専門医療ができる研修病院が必要であり、県内の病院と連携しながら今後も研修医を増やせる魅力的な病院にしていきたいと考えています。

昨年、医療的ケア児支援法が施行され、本年当院で「茨城県の医療的ケア児の支援について考える会」を開催しました。重症児デイ、家族会、入所施設、特別支援学校などのみなさんに現状と問題点を発表していただきました。非常にたくさんの関係者に参加いただき、問題点を共有できたと思います。医療的ケア児など障害児とそのご家族への支援はますます必要性が増していきます。今後は各職種の連携、教育の機会、行政支援などを通して、医療的ケア児支援法が有効に活用できるようにしていく必要があります。こども病院もそのために積極的に協力していきます。

新型コロナウイルス感染は、オミクロン株になってから小児の感染者、特に10歳未満の患者が増え、保育園や幼稚園でのクラスターが問題となっています。当院にも、オミクロン株になってから小児入院患者が増えております。小児は幸い重症化することは少ないですが、ワクチンの効果は弱く5歳未満への適応はないことから、小児の感染は長期化することが予想されます。更なる変異の可能性もあり予断を許しませんが、状況に応じて適切な対応ができるよう整えていくようにしています。

そのほか、急激な少子化など、こどもをめぐる問題は山積しており、小児病院の重要性はますます増しています。私は院長として、地域の医師会とも連携しながら皆さまのご支援のもと、県内のこどもとそのご家族が、幸せに暮らせるように努力していきたいと考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。