医療教育部

医療教育部は、平成24年7月に茨城県と筑波大学附属病院の連携によって設立されました。筑波大学附属病院・茨城県小児地域医療教育ステーションとしても、茨城県の小児医療の拡充および小児科研修医・小児科医師教育の充実を目的として活動しています。

こども病院は昭和60年の開院以来、茨城県小児医療の中核病院の一つとして小児医療の発展に大きな貢献をしてきましたが、茨城県、特に県北・県央地域ではいまだに小児科医師の不足や偏在の問題があります。当院は初期研修医の基幹病院となる条件を満たさないため、基幹病院初期研修医を受け入れて小児科研修を担当しています。できるだけ多くの初期研修医に小児医療に興味を持ってもらえるような研修を行い、将来の小児科医師数を増やしていくことが重要です。

もう一つの目的である臨床教育環境の整備については、こども病院の豊富な小児専門診療の実績と筑波大学の教育機能、最新の研究施設を統合して、将来、指導的立場に立てる小児科医師を一人でも多く育てて行くことを目標としています。初期研修から専門性の追求まで幅広く医師の生涯教育を支援し、学位や専門医の取得を含めてさまざまな医師のニーズに対応していきたいと考えています。

スタッフ

氏 名専 門
部長堀米 仁志小児循環器病学筑波大学医学医療系小児内科・教授 兼任
小林 千恵小児血液腫瘍学筑波大学医学医療系小児内科・准教授 兼任
田中 竜太小児神経学筑波大学医学医療系小児内科・講師 兼任
塚越 祐太小児整形外科学筑波大学医学医療系整形外科・講師 兼任

業務活動

構成員4名はそれぞれ小児科学における専門分野を持ち、こども病院および筑波大学附属病院における診療業務に携わっています。また、筑波大学医学群・医学類および大学院(人間総合科学研究科・疾患制御医学専攻、フロンティア医科学専攻)の教官を併任し、医学教育と大学院生の研究指導に当たっています。

循環器領域(担当:堀米):小児循環器科のスタッフ4名、小児科専攻医のローテーターと共に、年間400例を超える初診患者に対応しています。対象疾患としては、先天性心疾患がもっとも多く、不整脈や心筋疾患等が続きます。心臓カテーテル検査は週2回(火曜日と金曜日)の体制で施行し、総数は約110件、そのうち3割程度がカテーテル治療です。そのほか、心エコー、胎児心エコー、ホルター心電図、トレッドミル運動負荷心電図、心臓MRI、造影CT、核医学などの検査件数も増加しています。胎児心エコー検査は隣接する茨城県総合周産期センター(水戸済生会総合病院内)と連携して行い、先天性心疾患の新生児に出生直後から対応することによって救命率の向上に大きく貢献しています。

筑波大学附属病院において循環器内科と協力して「成人先天性心臓病外来」を行っていますが、患者数の増加に対応するため、県立中央病院と水戸済生会総合病院でも外来を開設しています。今のところ月1回の専門外来として開設していますが、今後増やす必要性があります。従来の筑波大学附属病院における同外来と合わせ、県内全体をカバーできるようになりつつあり、他県からの紹介患者も増えています。また、医師不足地域の小児医療支援の目的で、北茨城市民病院で月1回の小児循環器専門外来を開設しています。

学校心臓検診として、茨城県総合健診協会の一次検診の心電図判読、二次検診における診察にも参加しています。

血液腫瘍領域(担当:小林):小児総合診療科スタッフ、小児科専攻医のローテーターらと共に、腫瘍性・非腫瘍性血液疾患について、入院・外来化学療法および長期フォローアップを含めた診療を行っています。また、臨床遺伝専門医として、遺伝外来を開設し、不定期で遺伝カウンセリングを行っています。

平成28年度より、成人になった小児がんを経験した成人患者に対し、その晩期障害や合併症等の健康リスクを知ってもらい、早期からの定期的な受診を促すための情報連携システムの構築を継続しています。前年度開催した、過去にこども病院で血液腫瘍疾患の治療や造血細胞移植を受けた18歳以上の患者および家族を対象とした「こども病院 CCSの集い」は、2019年はコロナウイルスの流行により中止しましたが、本年度はwebで開催し、6名のCCSと2名の父兄が参加しました。また、ホームページでCCSの健康管理に関する情報提供を行うとともに、相談窓口を開設しました。

緩和ケア委員会の委員長として、症状緩和に関する相談ならびに治療方針決定に関連した家族や医療スタッフのサポート、倫理的内容を含むコンサルトへの対応を行っています。

日本骨髄バンクの調整医師として、非血縁者間骨髄移植または末梢血幹細胞移植実施のための、提供希望者への医学的な対応を行っています。

緩和ケア講習会のファシリテーターとして、県内のがん診療に携わる者向けの緩和ケア講習会(PEACE)や小児緩和ケア講習会(CLIC)へ参加し、緩和ケアの普及とネットワーク構築に尽力しています。

茨城県がん診療連絡協議会の緩和医療推進部会、がんゲノム医療部会、相談支援部会に参画し、県内の小児がん患者の診療体制充実を図っています。茨城県がん生殖医療ネットワークのメンバーとして、小児がん経験者に対して妊孕性温存に関する情報提供と診療機関との連携を行っています。

神経領域(担当:田中):神経精神発達科(常勤4名、非常勤医師6名)の長を務めています。こども病院で週3日、筑波大学附属病院で週1日、発達障害、てんかん、脳性麻痺などの外来診療を担っています。入院診療では、新生児期~思春期における神経疾患に対し、急性期(神経学的評価や診断・治療に関する助言など)から亜急性期~在宅移行期(神経学的後遺症に対する治療、リハビリテーションの導入、生活環境調整など)を通して、新生児科や総合診療科と連携してシームレスな医療を提供しています。当院全体の神経生理検査(脳波、神経伝導検査、針筋電図など)の遂行や助言も担っています。

令和2年度は特に、脊髄性筋萎縮症に対する先端医療(核酸医薬による治療および遺伝子治療)の遂行、ビデオ脳波同時記録によるてんかん外科の適応判断、医療的ケア児に対する重層的な診療の構築、筑波大学や周辺医療機関と連携した移行期医療の推進、発達障害に関する治験、不適応行動を示す生徒に携わる教育機関への助言、全県規模の小児神経学術組織(茨城小児神経懇話会)の統括に携わりました。

小児整形外科領域(担当:塚越):令和元年度より小児整形外科の標榜が開始されています。平成30年度までは手術が必要な小児整形外科症例には対応できていませんでしたが、令和元年度から手術加療も含めた整形外科診療を提供しています。整形外科救急および入院・手術加療については水戸済生会総合病院と協力して診療を行っています。

平成28年度から学校健診における運動器検診が義務化され、二次検診の受け入れを行っています。令和2年度より日本学校保健会の「運動器検診の手引作成委員会」に参加し、検診体制の充実化に尽力しています。

また、以前より乳児健診における股関節検診の二次検診の受け入れを行っていますが、筑波大学附属病院および茨城福祉医療センターとともに、茨城県内の股関節検診体制の再構築を実施中です。

(2) 院内研修医教育・学術面

  1. 研修協力型病院として以下の研修基幹病院の小児科初期研修プログラム編成、運営に参加
    筑波大学附属病院、茨城県立中央病院、国立病院機構水戸医療センター、水戸済生会総合病院、水戸協同病院、筑波記念病院、東邦大学医学部附属病院
  2. 初期研修医、専攻医(後期研修医)を対象としたレジデントレクチャーの運営
  3. ベッドサイドでの小児の診察法、脳波読影、心電図・心エコー読影、血液像の読み方等の指導
  4. 筑波大学医学群医学類生の実習受け入れ
  5. 院内学術報告会の運営(第6回から医療教育部で担当。年2回)
  6. 小児内科系連絡会議の運営若手小児科医師の論文執筆指導
  7. こども病院小児科医師の筑波大学昼夜開講大学院への入学、臨床研究の支援
  8. 茨城県の支援で当院に開設された小児医療・がん研究センターへの参加
    (次世代シークエンサーを用いた小児期遺伝性不整脈の遺伝子解析を継続)
  9. 当院勤務医のe-Rad取得、文科省科研費申請の推進、支援
  10. 臨床研究セミナーの実施
  11. 大判プリンタによる学術集会等における発表用ポスター等の印刷支援