小児泌尿器科(2022年度)

診療体制

2022年度のスタッフは矢内第二医療局次長と益子部長の2名であるが、人員と連携の点から小児外科のスタッフと共に診療を行っている(矢内・益子は小児外科を兼務)。

手術

小児外科のスタッフと共に手術を行っており、2022年は小児外科・小児泌尿器科の全身麻酔下での手術・検査件数767件(両側例や複数手術例を2件として集計)の内231件(30.1%)が小児泌尿器科手術・検査であり(表)、コロナ禍が始まった一昨年と比較すると、小児外科・小児泌尿器科の件数も小児泌尿器科の件数も若干減少した。表の泌尿生殖器腫瘍では性腺腫瘍の手術のみを掲載したが、副腎・腎・後腹膜腫瘍の手術は小児外科とオーバーラップする分野であり、小児外科の手術統計に含まれている。なお、昨年度と同様、他の登録作業との集計の都合上、2022年1月~2022年12月の件数とした。

尿管膀胱移行部通過障害と膀胱尿管逆流に対する尿管膀胱新吻合術の件数が増加し、低侵襲の注入剤による膀胱尿管逆流手術(内視鏡的注入療法)の件数は大きく増加した。内視鏡的注入療法は保険適応が1回の施行に限定されているため、逆流が残存して内視鏡的注入療法を追加で実施ししても診療報酬点数を算定することはできない。なお、新吻合術を施行した症例は乳児から幅広く適応があった。また、最近では1.5cmの鼠径部小切開創から膀胱外アプローチによる低侵襲手術も採用している。

腎盂尿管移行部通過障害(水腎症)に対する腹腔鏡下腎盂形成術(後腹膜到達法)を1例に施行し、1.5㎝の小切開による後腹膜鏡補助下での腎盂形成術を2例に施行して、手術創の整容性改善と疼痛減少に努めている。

尿道下裂の手術件数が8件に増加した。

緊急手術になる精巣捻転の手術の術前に、超音波診断室と協働して超音波ガイド下の用手捻転解除に取り組んでいる。手術待機までの精巣の虚血時間を短縮し、患児の疼痛を緩和する効果に長けており3例に施行した。

当科では、スタッフドクター全員が日本内視鏡外科学会の技術認定医を取得しており、世界でも先進的な内視鏡外科手術を積極的に取り入れる準備を常に行い、安全を最大限に配慮しつつ、腹腔鏡手術による腎盂形成術、腎部分切除術、後腹膜腫瘍切除術などの低侵襲手術の改良を重ねている。腹腔鏡下精巣固定術にも継続して取り組んでおり4例に施行した。

なお、件数が少ない禁制型導尿路作成術を2例、腸管利用膀胱拡大術を1例、腟形成術を2例に行った。性分化疾患に対する形成術など、患児や家族のQOLを改善する手術にも対応しうる、国内でも数少ない施設の一つである。

外来

木曜日午前・午後を矢内が、金曜日午前・午後を益子が、小児泌尿器科・小児外科を担当している。また、他の小児外科スタッフの外来日にも各スタッフが対応している。

地域貢献

茨城小児科学会で当科の治療経験を報告して地域小児医療の一翼を担えるよう小児泌尿器科疾患の診断・治療の普及・啓発に努めている。また、日本泌尿器科学会茨城地方会にも参加して当科の活動を広報している。

教育

院内の看護師への講義(小児泌尿器科疾患の術前術後管理)を実施している。

(小児泌尿器科部長 益子 貴行)

表 2022年全身麻酔下手術・検査件数
泌尿生殖器
   腎生検2
   腎盂形成術 (腎盂尿管移行部通過障害) (後腹膜鏡下1)3
   尿管皮膚瘻造設術2
   尿管尿管吻合術3
   尿管瘤切除術1
   尿管膀胱新吻合術 (尿管膀胱通過障害)4
   尿管膀胱新吻合術 (膀胱尿管逆流)12
   注入剤による膀胱尿管逆流手術13
   膀胱憩室切除術1
   膀胱皮膚瘻造設術1
   膀胱皮膚瘻閉鎖術1
   回腸利用膀胱拡大術1
   禁制型導尿路作成術2
   尿道形成術 (尿道下裂)8
   経尿道的後部尿道弁切開術2
   環状切除術、陰茎形成術 (埋没陰茎)18
   腹腔鏡下精索静脈瘤手術4
   精巣固定術 (停留精巣、移動性精巣) (腹腔鏡下4)50
   精巣摘除術 (遺残組織も含む)2
   精巣捻転症手術3
   精巣腫瘍核出術1
   卵巣腫瘍切除術 (奇形腫など:腹腔鏡補助下4)4
   腟形成術2
   膀胱鏡・膀胱造影・逆行性尿管造影・膣鏡・膣造影45
   膣ブジー6
   その他40
合計231